【法律コラム】相続:預貯金は遺産分割の対象か?

銀行預金が遺産分割の対象になるか否かが争われた裁判で、最高裁大法廷が、先月19日、両当事者の意見を聞く弁論を開きました。

従来から、最高裁は、預貯金を遺産分割の対象とせず、不動産や株式といった他の財産と関係なく、法定相続分に応じて当然に分割されると考えてきました。つまり、相続人同士で、遺産分割協議が整っていなくても、早く預金の払戻しを受けたい相続人は、銀行等の金融機関に対して、法定相続分にしたがった預金の払戻しを求めることができる、というのが現在の正しい理論です。

ところが、現実問題として、上記理論にしたがって、遺産分割をしないまま各相続人が金融機関に対し払戻しを求めても、金融機関は、相続人同士の争いに巻き込まれることを避けるため、遺産分割協議書か、相続人全員の同意がなければ、法定相続分の預金の払戻しには応じていません。その結果として、弁護士が代理人となって粘り強く交渉するか、あるいは、銀行に対し訴訟を提起することが必要となっています。

上記のような現実問題に対応する形で、弁護士同士の話合いや家庭裁判所における調停などでは、預貯金も遺産分割の対象とするなど、柔軟な解決を試みていました。

最高裁の判例が変更になり、預貯金も遺産分割の対象とすることになれば、社会における一般的な感覚や銀行実務に近い形となり、相続財産の公平な分配を実現することが可能になると思われますが、遺産分割が成立するなど相続人同士で一定の合意が成立しなければ、預金の払戻しを受けることがおよそ困難になります。その結果として、紛争(払戻しができない状態)は長期化し、相続税の申告期限である10か月以内に遺産分割協議が成立せず、相続税を納税するための資金を用意できないという可能性も出てきます。

実務的に非常に重要な判例となるため、今後も注目していきたいと思います。

 

弁護士 坂根 洋平

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