【法律コラム】相続:預貯金も遺産分割の対象(判例の変更)

こんにちは。弁護士の坂根です。

最近、相続のご相談をお受けしていると、以下のようなご質問をよくお受けします。

「相続人同士で遺産分割の話合いを行っていますが、なかなか話がまとまらず、家庭裁判所の遺産分割調停を行わざるをえない状況です。銀行預金は相続財産に含まれず、遺産分割の対象にならないと聞いていましたが、最近、ニュースで最高裁が見解を変更したとも聞きました。どのように考えればよいでしょうか。」

■ 従来の最高裁の見解(預貯金は遺産分割の対象ではない)

従来の最高裁は、預貯金などの可分な債権については、相続開始と同時に法定相続分に応じて、各相続人が単独で相続するという見解をとっていました。他方、金融機関は、実務上、相続人同士の争いごとに巻き込まれないよう、遺産分割協議書の提出か、あるいは、全相続人が署名押印した相続届の提出がなければ、預貯金の払戻しに応じていませんでしたが、それでも、(従来の)最高裁の見解に沿って、事案に応じて葬儀費用等を捻出できるよう「一部」の払戻しには応じたりしていました。

■ 判例の変更(預貯金も遺産分割の対象)

昨年12月19日、最高裁大法廷は、上記の従来の見解を変更し、預貯金は遺産分割の対象になるという初めての判断を示しました。最高裁は、その理由として、遺産分割の仕組みは相続人間の実質的公平を図るためのものであり、そのためにはできる限り幅広い財産を対象とすることが望ましいことなどをあげています。

判例変更により、社会における一般的な感覚や銀行実務に近い形となり、相続財産の公平な分配を実現することが可能になると思われますが、他方で、遺産分割が成立するなど相続人同士で一定の合意が成立しなければ、預金の払戻しを受けることがおよそ困難になります。

■ 遺言書の作成や迅速な遺産分割協議が重要

判例の変更により、今後、金融機関は、遺産分割前の預貯金の払戻しに一切応じないことも予想されます。その結果として、紛争(払戻しができない状態)は長期化し、相続人が葬儀費用などを相続財産から捻出できない事態や、相続税の申告期限である10か月以内に遺産分割協議が成立せず、相続税を納税するための資金を用意できないという事態も出てくると思われます。

今後、従来以上に、事前に遺言書を作成することが重要となるほか、遺言書がない場合には、相続人間で迅速に遺産分割協議を成立させる必要があると思います。

遺言書の作成や遺産分割協議に関する法律相談は、初回1時間無料で行っておりますので、ぜひ一度当事務所までご相談下さい。

 

弁護士 坂根 洋平

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