こんにちは。弁護士の坂根です。
最近は、集中して交通事故に関するコラムをご案内しています。
前回は、治療中に行うべき事項として、以下のことを列挙しました。
① 人身事故の届出をする(警察対応)
② 治療に専念する
③ 休業損害の請求をする
④ 交通費等の立替費用の請求をする
本日は、②に関するご案内です。
交通事故の人身損害に対する損害賠償額総額は、基本的に、治療が終了するか、後遺障害等級が確定しないと計算することができません。
軽傷か重傷かで支払われる賠償額は異なりますが、軽傷か重傷かは結局、治療期間の長さや最終的な後遺障害の有無によって「事後的に」決まるからです。
したがって、治療中の段階(とくに事故直後)では、「どの程度の賠償がもらえるか」を気にしすぎても、その後の事情によって左右されるため、あまり意味がありません
(※ただし、次回コラムでご案内しますが、休業損害や交通費等、名目がはっきりしていて、その金額を容易に立証できるものは、計算可能=支払いを受けることができます。)
大事なことは、治療に専念することです。
私は弁護士ですから、ここにおける「専念」とは、必ずしも医学的な観点からのアドバイス(例:安静にしましょう)ではありません。
具体的には、
㋐ 主治医といえる病院(医師)を見つけること
㋑ 継続的に治療を受け、必要に応じてMRI等の画像検査を受けること
㋒ 整骨院への通院には、医師の指示ないし承認を得ること
が大事です。
交通事故の損害賠償請求の事案では、診断書や診療報酬明細書、施術証明書など、医療機関が作成する資料が極めて重要です。
これらの資料に基づいて損害賠償額が認定されていきます。
「家で安静にしていた」「医師と相性が悪いから、ほとんど行かなかった」「仕事が終わると整形外科に通えないから接骨院にしか通院していない」といった事情は、損害賠償額の認定にあたって、被害者の方にとってマイナスに働きます。
つまり、決してそのような事情は虚偽であると思いませんし、むしろ真実であると思いますが、裁判所や法律の世界では、このような自己申告では、本来支払われるべき損害賠償額を立証できません。
したがって、きちんとした賠償を得るためには、病院等に通院して、継続的な治療や検査を受けることが必須です。
そして、必要があれば転院しても構いませんが、誰が主治医といえるかわからなくなる程度に転院を繰り返すと、後々、診断書を書いてくれる先生が見つからない、あるいは見つかっても証拠として不足ということになりますので、できる限り、特定の医師の指示のもと診察やリハビリを継続することが大事です。
損害賠償を受けるために通院を工夫するとなると、やや本末転倒にもみえますが、日本の法律における損害賠償は、上記のような仕組みになっていることは理解しておく必要があります。
厳しい現実ですが、客観的な資料に基づいてきちんとした立証ができないと、本当は真実であっても、裁判や法律の世界における「事実」にはならないのです。
上記の趣旨に沿ったアドバイスを差し上げることが可能ですので、このような観点からも早期ご依頼が重要です。
通院の頻度などについては、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
少し内容が難しいでしょうか 苦笑
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弁護士 坂根 洋平